しずく

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「おはようございます。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「……んん…?」
 朝、起きて一番最初に視界に入ったのは、隣で寝転ぶ会社の後輩だった。
「……あけおめ…ことよろ…」
 朝一番の後輩の声に圧倒されながら、発した声はやけに掠れる。
 もう慣れた光景だ。
 最近はこいつがここに寝泊まりすることが増えた。それに伴い、以前はド直球に結婚を申し込まれることが主だったが、最近は同棲を申し込まれるようになった。
 …いや、なんで?
「今回は年を越す瞬間までも一緒に入れて、本当に幸せな1年です」
「たまにくるガチトーン、怖いわ。なんだっけ?去年は、新年一発目の挨拶をもらうために、そこのコンビニに張ってストーカー?……なんで俺、こいつと付き合うことを許可したんだっけか」
「え、やだなぁ、やめてくださいよ。新年始まって早々別れるなんてことになったら………まって、考えたくない」
 想像したのだろう。
 なんとか想像しようと顔を顰めていたが、みるみるうちに絶望に染まっていく表情。そのまま頭を抱えだした後輩
に、くすくすと笑いが漏れる。
 こいつは割と表情が忙しい。
「先輩、お雑煮と先輩が好きな物だけ詰め込んだおせちありますけど、食べます?」
「あー、後ででいい?アイス買いに行く」
「それ、俺もついてっていいやつですか?」
「いいよ。つか、許可しなくてもついてくんだろ」
「まぁ」
 当然のようについてくる体制に入っている。…準備が早い。
 多分冷凍庫にはこいつが買っておいたアイスのストックがあるんだろう。昨日見かけたのだから間違いない。
 朝はアイスを欲する俺のことを考慮して、こいつはいつも冷凍庫にアイスをストックしている。
 しかし、今日は外に出てアイスを買いたいという意思は汲み取られたのだろう。
 なんなら、せっかくの今日、こいつがあのコンビニに行きたいまであると思う。
「…去年からのこと考えると、なんか本当に幸せすぎて溶けそうです。…嬉しい」
「……、」
 そう言ってしれっと手を繋いで自分のコートにそのままふたりぶんの手を入れたこいつ。
 頬と鼻の先を染めて、あまりにも幸せそうに笑うから。
 今年は割といい年になりそうかも、とか思ったり。

 シュッ
「あっ、ちょ、なんで手離しちゃうんですか」
「……」
「………え、まって、え、先輩顔赤い、かわいい、え、え、結婚、やっぱ、結婚してくださ」
「…うるさ」


新年 #241
(去年の続き?的な)

1/1/2026, 1:55:50 PM