泡藤こもん

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ある日、世界中のありとあらゆる人々に、ありとあらゆる手段によってメッセージが届けられた。
『約束の日、神様がこの世で最も偉い人間の前に降り立って、「人類は生き残るべきか?滅びるべきか?」と問うでしょう』
そこからはもうてんやわんやだ。
降臨とその時刻が明確に示されたことで既存の宗教も新しい宗教も色々言い始めるし、
色んな人々が「この世で最も偉い人間とはなんだ」って喧々諤々の討論を始めるし、各国の首相や様々なリーダー達が「私こそが」と胸を張り始めるし、
もしかしたら「約束の日」のその瞬間に人類が滅びてしまうかもしれないなんて、誰も気にしていなかった。蚊帳の外にされていた。

果たして約束の日、約束の時間。
祈ったり喚いたりしていた人達を他所に、神様はその時刻に生まれたばかりの赤ん坊のもとへ現れた。
医者にも母親にも目を向けず、今へその緒を切られたばかりの赤ん坊、その子を抱く看護師のもとへと神様は歩み寄って、言う。
「人類は生き残るべきか?滅びるべきか?」
まだ羊水と血液にまみれた赤ん坊はただ「おぎゃあ」と泣いて、神様はそれに「そうか」と頷いて、その「神様」としか言い表せない姿を消し去った。

「最も偉い人間」が何と答えたのか、神様はそれでどんな結果を得たのか。
分かるのは神様ばかり。
赤ん坊は、とりあえず今はご機嫌で笑っている。

7/27/2023, 4:15:27 PM