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遠くの空へ


飛べると信じていた。こんなにも立派な翼があって、仲間たちが自由に空を飛ぶ様子を見ていて、飛べると本気で信じていた。
少しだけ助走をつけて、翼を大きく動かして、ふわっと足が浮いた感覚がした。そのまま翼を動かし続けると、どんどんと視界が上がっていく。
飛べてる、飛んでいる、とわかって滑空するように翼を広げる。見慣れた景色のはずなのに、上から見下ろす景色はこんなにも違って見えるのか、とそんなことを思った。
もっと遠くへ、と翼を動かすが、そこでようやく違和感に気づいた。見えない何かがそこにある、と。見えない壁のようなそれはたしかガラスとか言うやつで。そこでようやく捕らわれていることを知った。
これ以上遠くへはいけない。ただこの狭い空間の中でしか飛べず、生きていくことしかできない。
ああ、と瞳からこぼれ落ちた涙はくちばしを伝い、地面へと落ちていった。
今日も遠くの空へと思いを馳せる。

4/12/2023, 1:57:00 PM