赫夜

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 紫陽花が咲いた。

 梅雨に入ってすぐの事だ。

 紫に近い青の花を束ね、自己の存在を主張するかのように咲いている。

 空を見上げると、分厚い雲におおわれて、灰色に染まっていた。

 これが青空であったなら、どれほどこの紫陽花が美しく映えただろうか。

 しかし、今は梅雨なのだ。

 青空が見える日の方が少ない時期である。

 私は紫陽花が可哀想に思えた。

 これ程美しい花であるのに、青空を知らず、陽に照らされることも少ないのは悲しいことだ、と。

 だが、それでも紫陽花は立派に咲いている。

 それを見た瞬間、可哀想だという考えは消え去っていた。

 紫陽花は誰よりも、梅雨の時期を美しく過ごすことが出来る、という考えに移り変わっていた。

 私は、それが羨ましく思えた。

6/13/2024, 3:02:13 PM