六月の帰路

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(2)
風に捲られた小説みたいに、電柱が移り変わり
電線が文字の様に綴られていた。
遠い場所を探している
街を出る時、どこか帰れなくてもよくなるみたいな気持ちになる時があって
今どこに向かっているのだろうと思い込んで
地球が回っているみたいな そんな気がして
辞書を閉じた。
冷却室に埋まる思いの出来事 溶けて無くなりはしない
辞書、小説、漫画、香り、全部温もりだった。
少しだけ休むといって
君は溶けちゃってどこかへ消えた
駅の看板の文字 錆びた僕の心臓が不快感を訴えた
それが無くなることも、もうずっと訪れないと自分自身を疑っていた なぜここにいる? なぜ電車に乗ったのか?溶けだす前に段差を下った。



10/27/2022, 4:56:34 PM