雷兎

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大切なもの――――

「こんな小汚い指輪なんて1円の価値にもならん」
「うーん、磨いたとしても値は付きませんね」
「いやいやこんな汚いの売りに来ないでよ」

『お宅さ、うち舐めてんの?』

どの店も揃ってこの言葉を言う。
俺にとってこの指輪は何億何十億、いやそれ以上の価値がある。だがこれに値を付けろと言われると値が付けられないのが現実だ。
他の人から見れば汚いボロいだけの指輪だけど、俺からすればたった一つの……たった一人の亡き母が渡してくれた大切なものだからな。
まぁそんな大切なものの値を知ろうとしてる俺は、余っ程親不孝なのかもしれないがな……

4/3/2024, 8:19:11 AM