しじま

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 よこなぐりの雨を旅館の窓から睨めつけて、ため息を一つ。

ずっと前から、具体的に言うと183日前から楽しみにして、綿密なる計画を立てて指折り数えて本当に楽しみにしていた旅行なのに。
 あいにくの雨。ありえないくらい土砂降り。
時折、吹きつけてくる風に薄い窓ガラスがピシピシと鳴る。
山の天気は変わりやすいと云うが、山々を削る薄墨色の雲を見る限り、暫くは止みそうにない。
 怨みがましく畳の上を這って座椅子に戻れば、読んでいた文庫本を閉じて君がクスクスと笑った。
しょうがないよ、と差し出された菓子を不貞腐れながらモシャモシャとかじる。

 再び本を読みだした君の膝を枕にし、唸り声のような風雨をBGMにして、壁掛け時計の振り子が左右にゆらゆら揺れるのをぼんやりと眺めた。



 肩を揺すられ、ハッと目が覚める。
旅館の白い布団から這い出て、そのままヨタヨタと窓辺へ。
キラキラと光る湖面が目にうつる。

安堵の溜息一つ、傍らで怪訝そうに立ち尽くす君に、おはようのハグをした。

テーマ「ところにより雨」

3/25/2023, 8:29:13 AM