名無しさん

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#病室



四角く区切られたこの病室に窓はない。
あるのは唯一の出入口である扉と区切り板だけだ。
こんなに息が詰まる部屋は、そこにいるだけで気が触れてしまいそうになると思った。
真っ暗闇な中、自分以外に誰かいないだろうかと周りを見回してみる。
だが真っ暗闇なのだから何も見えず、代わりに聞こえてくるのはゴウゴウという風の慟哭だけだった。
誰か助けてくれと叫ぼうとしたが、自分は声が出せないのを思い出した。
そうしてどれくらい経った頃だっただろうか。
ガチャリと唯一の出入口である扉が開いて、そこに見たこともない奇妙ななにかがぬっと現れた。
そして、奇妙ななにかは細長い小枝が五本ついた太い枝をこちらに伸ばしてから自分をむんずと鷲掴みにすると、そのまま光の方へ連れて行き。



「ママぁー、卵ってこれで終わりー?」
「テーブルの上にある買い物袋にさっき買ってきたのがあるから、それも一緒に使っちゃいなさい」
「はーい。オムレツにしようかなー?それとも卵サラダ?うーん、どっちがいいかなぁ」

8/2/2023, 7:32:02 PM