喜村

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 20年前、子どもの頃、友達に好きな色を聞かれた。
 私は即答で、茶色、と、答えた。

「えー、茶色とか大便じゃーん!」
「きったなーい! 女の子なんだから普通ピンクとかじゃないのー?」

 子どもだから悪気はないのだ。
 純粋無垢な感想は凶器になる。
 茶色の何が汚くて、茶色の何が普通じゃないのだろう。

「茶色好きとか初めて聞いた!」
「私も茶色はきらーい」

 じゃあ二人は何色が好きなのかを聞く私。

「男はレッド! ヒーローの色が好きに決まってるだろ!」
「私はピンクと見せかけてのローズピンクが好き!」

 子どもの頃にそんな話をしていたが、大人になった20年後の現在。
 レッド好きとローズピンク好きの二人は結婚した。
 何故か腐れ縁だった私は、先輩既婚者だからという理由で、二人の新居の家具選びを手伝う羽目になった。
 家具は何色かに統一するか私は問う。

「そりゃ茶色一択でしょ!」
「飽きない色で揃えるなら、茶色って聞くし、茶色で!」

 私は私が傷ついた言葉を忘れていない。
 私の好きな色をバカにした思い出を。
 二人は覚えていないだろうけれども。

「二人とも、茶色が好きになったんだね」

 私は、新婚夫婦に貼り付けた笑顔でそう言った。

@ma_su0v0

【好きな色】

6/21/2024, 10:33:45 AM