蓼 つづみ

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誰かが決めた声高な願いを、
口先だけで揃えさせられる教室。
「翼が欲しい」
その一節は、私には宿らない。
この足は、泥に触れている方が静かに根を下ろせる。

地を離れたいと思えないのは私だけじゃないだろう。

飛ぶという比喩が示す自由や希望は、
あまりにも短絡的で乱暴だ。

どうせ、ひとの道なんて
脳が発達した動物が故の“長い生の持て余し”に過ぎない。

行き先なんて無くても本当は構わないんだ。
未来は進む先のどこかじゃなくて、
形を変えながらも息づいてゆく想いそのものだと思うから。

「誰も幸せになれないよ」
そんな声が、胸の奥をかすめても
簡単には沈まない恋もあるだろう。

制度が人を区画に分け、肩書きが必要とされていても、
どの枠にも収まりきれない熱もあるだろう。

だれもがその鉄を熱いうちに打てるわけじゃない。
現実は確かに重い。

だから、
火を焚けないなら、小さな炉でできる範囲を探す。
誰もが巨大な鉄塊を打ち鳴らす必要はない。
細い針金だって、指先で曲げるだけで形は変わる。

そして、鉄を持たない事は欠落でもない。

公の仕組みや学校は、
「目立つ」「結果が出る」「他人と比べて優れている」
そういうフィルターで才能を探してしまう。
――だから皆たいせつなことを簡単に忘れる。

本当の才能ってもっと静かで、
対価も与えられずに日常の中に埋もれてるんだ。

たとえば、
人の話をじっくり聞けること。
空気を読んでそっと動けること。
ひとつのことを長く続けられること。
傷ついても、誰かを責めずに飲み込めること。

そういうものこそ本当は世界を柔らかくしている。
誇るべきだし侮るべきじゃない。

飛ばなくたっていい。
たとえ塞ぐときが長く続いても構わない。

自分の可動域を掴もうとすること
その過程こそが希望そのものなんだって信じてるよ。

題 見えない未来へ

11/20/2025, 10:08:27 AM