【通り雨】
「急に降って来ちゃって」
休日の昼過ぎ、君はいきなりびしょ濡れでやって来た。
「雨宿りさせてくんない?」
悪気のない笑顔に俺は頷くしかなくて、シャワーを貸し、着替えを貸し、コンビニまでビールを買いに走ってもてなした。
ただの雨宿り。
親しい友だちが通り雨に困っただけ。
君は鼻歌まじりにビールを飲み、分かるような分からないような話を続ける。
俺は自分ちなのにきまり悪くて、君の顔が見れない。
綺麗な指で光る指輪や、滑らかな首元で揺れるネックレスに視線を向けていた。
「あ、雨止んだみたい」
朗らかに言って立ちあがった君は窓の外を見て、「じゃあまた」と来た時と同じくらい唐突に帰って行った。
通り雨みたいな君に、俺は振り回されてしまうんだ。
9/27/2023, 11:13:03 AM