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「おめーマジでバカじゃん。今日雪降るってニュースで言ってたよ」
「誰が?」
「もりちゃんが」
「はいはいバカはあんたね」
横で幼馴染が、「もりちゃんは歴代お天気のお姉さんの中でもダントツで可愛いんだよ!」と騒いでいる。
ちくりとする胸と、沈んでしまう表情を隠すようにマフラーに顔を埋めた。彼は、お天気のお姉さんを可愛いと言っても、それ以上に近くにいる私のことは可愛いと言ってくれない。言ってもらっても苦しいだけだが。
彼はそういった"線引き"をさり気なくしてしまう人だ。だから私がたとえ勇気を出しても、もう既に「違うよ」と示されているから報われない。彼女もいないのに。
なのに時々、こうやって優しくしてくるから辛い。"線引き"をされるからこそ、彼からの優しさはただの情けだと感じる。
もう我慢できなかった私は、彼が持っている傘をはたき落とした。
「おい!何すんだよ!」
「ばっかじゃないの!私ら幼馴染なんだよ!何で相合傘なんかしてんのよ!」
「何でって、お前が傘忘れたからだろ?」
「気色悪い!ほんとばっかじゃないの!」
そのまま私は一人で走って帰った。
頭にかかる雪が冷たくて冷たくて、何度も頭を振った。
涙は頬で凍るなんてこともなく、重力にしたがって流れていった。

6/19/2023, 12:51:47 PM