冬華(トウカ)

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ふと見上げた夜空には、のぼり始めた三日月。

三日月を見るのは久しぶりだ。

それにしても、綺麗だと感じる。

最近、色々あったため、疲れていると言うのも、理由の一つかもしれない。

しかし、私は月の形のなかで、三日月が一番好きだと思う。

綺麗で儚く、優しい白い光であるのに、わたしたちを淡く照らしていて、その、消えそうなのに、力強さを感じる光が心地いい。

三日月の光を浴びていると、心が浄化される。
今までの悲しみを、慰めてくれてるみたい。

あぁ、まただ。また、涙が流れてきた。

でも、私が泣くのは、これで最後にするよ。だって、私が好きな、三日月が見ているから。慰めているから。

でも、今夜だけは、あなたを好きでいさせて。

あなたもきっと、許してくれる。三日月も、きっと。だって、優しいんだもん。

私は一度俯き、大きく息を吐いた。私の中の何かが、どこかに飛んで行った。

そして、上を見上げる。涙でぼやけていた視界が晴れる。まだ、視界の端はぼやけているが、三日月ははっきりと見える。

「どうか…元気でね…大好きだよ…」

その言葉は、喉が乾燥していたから、すごく掠れていて、音として出ていたかもわからない。

でも、三日月は、その言葉をちゃんと聞き取っていて、君の心に、届けてくれると思う。

そして、私は目元を拭い、涙を流すのをやめた。

そしてもう一度、三日月に視線を向ける。

私は三日月に微笑んで、歩き出す。

三日月も微笑んで、歩く私のことを、優しく、優しく、見ていた。

私は、三日月の光に照らされていた。

1/9/2024, 12:50:52 PM