木綿

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おかあさんはいつも、僕達兄弟を名前で呼んだ。
お兄ちゃん、弟、どちらも好きで生まれてきている訳ではない。だから、あなたはあなただからと。
2人とも違うから良いんだよ。喧嘩は1人では出来ないからね、話してみようか。

パパはあなた達にとったらおとうさんだけど、私のおとうさんじゃないから名前で呼ぶのよ。

お母さんはいつも、楽しそうに笑う。
どれだけ汗をかいても、けらけら笑って、僕らと同じ目線で過ごす。
得がたい宝なのだと、ベッドで優しく髪をなでる。

強いひとだ。明るく、太陽のようで、口の中で溶けゆくキャラメルみたいな人だ。
いつも沢山笑うお母さんが、数えるくらいだけ、子供のように泣きながら、ぼろぼろ涙をこぼした日がある。

だけどそれは、僕らのかわりに。僕らのこころにたくさん、たくさん謝って。

そんなお母さんのなみだは
悲しくなるほどあたたかくて。
愛されている自分に泣きたくなるほどせつなかった。



「雨に佇む」

8/27/2023, 10:40:24 AM