雪だるま

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 やっと。やっとだ。
父が研究のために使っていたという建物が分かった。まさか他人の家の地下室を勝手に使っていたなんて。私は、ある日突然姿を消した父の真意を知るために、暗闇の中に入っていった。
 不幸にも、地下室には父の全てが残っていた。だが、それは私の望んだものではなかった。

 一年前、友人と共に見たつまらない映画。私はその映画のシーンから、父の痕跡を見つけた。
 私は誰にも悟られないよう、時間をかけて着実に準備を進めてきた。そして、ついに真相にたどり着いたというのに。
 そこにあるのは、どこまでも凡庸な男の片割れだった。

 私は失望のうちに部屋を出た。そして、なにもかもがどうでも良くなった私は、これまでずっと探し求めていた父の幻影を追うのをやめ、帰路に着くことにしたのだった。


(これまでずっと)

7/13/2023, 3:16:59 AM