かのこ

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『花咲いて』2023.07.23


 きらびやかな舞台上に、大輪の花が咲いている。
 ひときわ大きな花は、頂点の証。両脇の花も見事なものである。
 そのうちの片方、二番手の証を背負った花がこちらに気付いた。
 パチン、と音がしそうなウインクを飛ばしてくる。やめてほしい。
 ファンなら卒倒ものだが、残念なことに自分は彼女の義兄にあたる。彼女らの特技を見せつけられても、キュンとはしない。
 トップは皆に平等に視線を送っている。相方は両親でも見つけたのか、パッと華が咲くような笑顔を見せた。
 二番手は観客に微笑みかけながら、銀の橋を渡る。そして、またこちらにウインクを一つ。
 その度に自分の周りに座っている観客が、手拍子をしながら声にならない悲鳴をあげている。確か隣の女性は、今日が初観劇だと話していた。これで二番手のファンが一人増えた。
 そうやって、いわゆる一本釣りを得意とする者が、いた気がする。すごく身近に。
 それはともかく、我が義妹ながら罪作りな女性だと思う。
 闇の深い、俗な言い方をすればヤンデレな役を得意とし、愛する人に熱心に愛を向ける様に、ファンは自己投影する。
 私もあんなふうに想われたい。こんなぐあいに。
 それをさらりとやってのけるのだから、たいしたものだ。
 花園で花咲く彼女は、義妹であり、尊敬に値する役者である。

7/23/2023, 12:28:44 PM