終花

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『高く高く』

背の高い父に肩車された事を未だ覚えている。
いつもよりも何倍も高い位置から見る地面はとても遠くて、いつもよりも何倍も高い位置から見る天井はとても近かった。

遊園地で父に肩車された事を未だ覚えている。
いつもよりも何倍も高い位置から見る観覧車は少し小さくて、いつもよりも何倍も高い位置で見る人の姿は、とても小さかった。

野原で父に肩車された事を未だ覚えている。
いつもよりも何倍も高い位置から見る草花はビーズのように見えて、いつもよりも何倍も高い位置から見る大空はもっと広く見えた。

あの時私は、手を伸ばしたはずだ。手を高く高く伸ばして、空を触ろうとしていたはずだ。空は私が思っているよりも何倍も高いらしい。


あの青にはどれだけ高く手を伸ばしたら届くだろうか。
あの高い高い空は、どこから始まるのだろうか。

そんな事を思っていたことも覚えている。

10/15/2024, 4:05:14 AM