300字小説
世界で一番のイルミネーション
車椅子に酸素ボンベを取り付け、妹を乗せる。ベルトで固定し毛布でくるむ。
病院のドアが開く。
「出発!!」
駅の駅員さん、学生のお兄さん、お姉さん。マッチョなおじさんに飴ちゃんをくれたおばさん。いろんな人に助けられ、エレベーターとスロープを駆使して、コロニーの端に向かう。
「お兄ちゃん!」
見えて来たのは展望台。外殻の窓越しに広がる宇宙空間。その先には……。
「綺麗っ!!」
妹の歓声が響く。夜の地球に浮かぶ灯りは、世界一美しいイルミネーションだ。
「ありがとう。お兄ちゃん」
妹が両手を握る。
「私、手術、頑張る! そして、今度はあそこから見るんだ!」
指さす先には無重力展望台。
僕はその細い小指に自分の小指を絡めた。
お題「イルミネーション」
12/14/2023, 11:21:19 AM