‐ 幽閉ざされた教会‐
葡萄酒ぶちまけ
滲んだ夜に
ぼくは獨り彷徨ひ出る
引きずる足枷
傴僂の背中
肩で呼吸し
瞳を光らせ
闇夜に鼻面搖らし乍ら
獲物の足跡
嗅ぎ分け探す
雲間に見える
月の恥ぢらい
獲物は何處だ何處にゐる
黒い外套のあの姿
兩手を見つめ
咆吼をあげて
牙を剥き出し
足鳴らしす
乾いた嗤いが歎きが
胸に噴き出て止まらない
老若男女
誰彼構はず手にかけて
聖なる夜を血に穢す
食ひ散らかしては
次を探して夜を彷徨ふ
ぼくの獲物は
もういない
ああぼくに銀彈を
此の心の臟に銀彈を
安らぎと云ふ
銀彈の祈りを
割れた鏡に映つた
嘘、月
獲物を探して彷徨ひ歩き
大聖堂で夜を謳ふ
6/8/2022, 11:46:02 AM