三日月

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微熱

|田中晴海(たなかはるみ)くんとは家がお向かい同士の幼なじみだった。
「ねぇ、僕達付き合わない!?」
中学一年生の頃、突然晴海くんから告白された私は、ひとつ返事で彼と付き合うことに。
ところが晴海くんとは一年の夏休み前に小さな事で喧嘩したっきり··········。
仲直りする間もなく、夏休みに突入すると急なお父さんの転勤が決まり引っ越してしまったので、それっきり会うことも無く··········自然消滅という形で今に至る。
ところが高校の入学式で晴海くんと再開することに。
クラスも一緒になった私は、晴海くんの元へ行き挨拶をした。
「こんにちは、久しぶりだね晴海くん、私は幼なじみの|野口由奈《のぐちゆな》覚えてる?」
ところが、自分の名前を名乗った後、急に目の前がふらふらになり··········気が付けば私は保健室のベッドにいる。
(あれ?  あれれ、私、ど、どうしちゃったの?)
周りを見渡すと、ベッドの直ぐ横に置いてある椅子に腰掛け、私のベッドの隅で交差した腕に顔をうつ伏せにして寝ている晴海くんの姿が目に入った。
(もしかして晴海くんが連れてきてくれたのかな?)
そう思って晴海くんの頭を撫でてると、ふぁーっと欠伸をしながら晴海くんが目を覚ました。
「あ、えっと、その由奈久しぶりだね。 ってか、いきなり倒れるんだもんびっくりしたんだからな、微熱程度だったから良かったけど、もしかして、未だ怒ってる?」
「べ、別にもう何とも思ってないけど··········」
「ところで、熱下がったのか!?」
そう言いながらおでことおでこをくっつけてきた。
いきなり過ぎて心臓がドキドキして心拍があがった私は、身体中が火照り出す。
「おっと、未だ熱っぽいじゃん!!」
寝とかないと駄目だぞって布団を掛けられる私。
晴海くんは喧嘩する前の、付き合っていた頃のように優しかった。
「先生呼んでくるからな!」
「だ、大丈夫だよ··········これは違うの、もう熱下がってるから、えへへ!!」
そう言ったけど、晴海くんは行ってしまった。
それから暫くして保健の先生が来てくれて体温を測ると正常に戻っている。
「良かった!!」
晴海くんはそう言った。
その後、先生が職員室に戻り、私達も家に帰ることになった。
ところが、二人きりになったせいでまたドキドキが増して心拍が上がった私は、身体中が火照りだし··········。
「ん!?  また顔が火照ってきてるぞ!!」
そう言うと、またおでこ同士をくっつけて確認された。
「まぁ大丈夫かな、でも心配だから家まで送るよ」
その道のり、晴海くんは中学の時喧嘩の原因ともなった、私の鞄に付いていたお気に入りのうさぎのキーホルダーを自分のバックから取り出すと、私の手の平にポンと··········。
「ごめん、黙って盗んだりして··········」
「いいって、もう気にしていないから」
「ううん、由奈が良くても僕はずっと由奈のこと気にしてたよ、盗んだのは引っ越しするのが分かって、由奈と離れるのが寂しかったからなんだ!!   あの、また僕と付き合ってくれますか?」
再会してからすぐの告白··········二度目は無いと思っていたのに··········嬉しかった。
「はい、喜んで!!」
そう答える私は、またドキドキが増して··········。
「あ、あれれ、由奈の熱上がってるのかな··········」
あわあわしながら、晴海くんが心配してくれている。
(えへへ、さっきから私の身体が火照ってるのは微熱じゃ無いよ)
「晴海くん心配してくれてありがとう」
「家帰ったら早く寝ろよな」
「うん!」

11/26/2022, 1:24:32 PM