私の夢、ずっと昔から目標にしてること。
一番古い記憶は両親が喧嘩しているところに居合わせておもちゃ欲しさに父に抱っこをせがんだら、投げ捨てられた。突然のことで驚いて泣いたことだけは覚えてる。誰もあやしてくれることはなくて、私が泣いていることを口実に喧嘩がヒートアップしただけだった。
そのときに漠然と理解した。私は都合のいい人形でしかないことを。
絵を描くことが好きだ。描くことに集中している間は他のことを考えず誰のことも気遣わなくていいから楽だった。賞も取って公的に認められた、でも両親も他の身内も全員がオタクだ陰気だ無意味だと否定して認めなかった。
物語の主人公ならこんなことには負けず努力するやらバイトやらで道を切り開いて行っただろう。
残念ながら私にはそこまでの執念はなかった。給料目当てに看護師を目指そうとして、他人への興味関心の無さが原因で座学はできても実地が壊滅的で挫折した。
絵は今でも描いている。身内の目を盗んで夜中や誰もいない時間を見計らって安いコピー用紙に描いては消して切り刻んで水に浸けて中身のみえない袋にまとめてゴミとして出した。
夢ならばいくらでも描けるよ。いくらでも描いてやるとも。その度に死にたくなるほどの後悔と懺悔と憎しみを込めて、遺書を書くような気持ちで描いているよ。
この文章もそう。絵では抽象的すぎて伝わらないことを存在しない登場人物に背負わせて書き殴る。
意味もない、メッセージ性もない。思いつくままにパズルのピースがはまったときのような快感を思い出せるように言葉を並べる。
「描くだけなら誰にでもできるよ。特別にならないと意味もないこと、今の成人なら分かるでしょ」
ああ、無邪気に夢を語っていた昔が羨ましくも恨めしい。
【題:夢を描け】
5/9/2025, 11:48:43 AM