星
夜に見える星を模写して何の星座が見えたかを学ぶ理科の宿題。みんながこれが北極星で、それって夏の大三角形じゃない?みたいに笑う中、自分は先生に説教を受けていた。
「あのね、中澤くん。これはね、自分で見て描くっていう経験が大事な宿題なの。他の子のを見て写しても意味がないの。」
「…はい。」
今日学校に来るまでこのプリントが真っ白だったのは訳がある。夜は暗いから1人で出かけないで親御さんについてきてもらってねという先生からの注意を守りたかったから。でも、お母さんは夜に働きに出るし、お父さんは星そのものだから。星を見に行きたくても見に行けなくて、家の窓からは星が見えなくて、お母さんが帰ってくるのを待ってたら寝ちゃった。だから家族みんなで星を見にいったなべちゃんの綺麗な絵を写させてもらっていた。宿題のために大きな望遠鏡を買ってもらった話や、星ばかり載った分厚い図鑑が家にあるという話を聞きながら北斗七星を描いていた時、ちょうど先生に見つかって怒られているという訳だ。ああ、怒られちゃった。お母さんに告げ口されないといいな。宿題を忘れたかった訳でも1人だけ怒られて悲しくなりたかった訳でもないのに。自分で見て描くのが大事だなんて分かってる。やっと解放された後、じわりと滲んだ涙を飲み込んで何事もなかったかのようにみんなの星の絵を眺めていた。
3/11/2025, 10:13:21 AM