ずっとずっと夢見ていた、私だけの秘密の花園。
私だけのお兄ちゃん。
甘くてふんわりして、優しい大好きな香りだ。
「そんな、匂い、嗅がないで……ッん」
「それは無理な相談です」
私は前世から貴方をずっとお慕いしていましたから。
この令和に、室町時代の忍としての記憶を持ったまま生まれ変われるなんて思いもよらなかったけれども。
もしかしたら貴方とまた出逢えるかもしれないなんて、淡い期待を抱いて只管探し続けていた。
だからこの広い世界で再会できたのは最早運命なのだ。
たとえ貴方が前世を覚えていなくても構わない。
近付くためなら何でもやった。
「初めまして……かな」
まさか、貴方も前世の記憶があったなんて信じられなかった。
忍びとして生を全うした時は告白もできずに散っていったこの命。
ならばまず貴方に言うべきことは自分の本当の想いだろう。
ふわり、花が綻ぶ。
はにかんだような貴方の顔。
それでも種々の理由を付けて断ったり、こちらを避けたりするのは織り込み済みだ。
決して無理強いはしない、けれども諦めることもしない。
幾度の挑戦の後、向こうが半ば折れてくれる形でようやっと付き合うことになった。
最終兵器「お兄ちゃん」呼びと上目遣いに涙目。
これに弱いのは前世と同じだな。
心を完全に手に入れる前にまずは身体からでも早く自分のものにしたい。
強引に押し切る形で同棲に踏み切ったし、後は時間の問題だった。
翌日お互いに仕事も学業もアルバイトも無いことを念入りに確認した後、計画を実行することにした。
しかし予想外だったのは向こうも覚悟を決めていたことだ。
いつになく遅いと思っていた風呂は、彼なりに事前に準備をしていたからだった。
……やはり敵わない。
「そんな可愛いことをしてくれるなんて、貴方って人は……」
「……ダメだった?」
「そうじゃないから困ってるんでしょうが……!」
ベッドに勢いよく押し倒す。
ふわり。また、だ。
花が綻ぶ。
優しくて穏やかな香りに包まれる。
「随分待たせちゃってごめんね」
君の好きにして良いから
花の甘ったるい香りと共にベッドに沈みこんでいく。
3/17/2025, 2:27:31 AM