凍える指先(TOV)注:腐向け
暑さには強いが、寒さに滅法弱い。
寒さにかじかむ手をポケットに突っ込み、何とか体温を上げようと、ぴょんぴょん跳ねていた。
「…おっさん、うざい」
寒さで首をマフラーに埋めたリタがジト目で睨んでくるが、動いていないと戦闘に差し支えるので許して欲しい。
「そうだ!リタっち!いつもみたいにファイアボール!ファイアボールちょうだい!」
「はぁ?」
「そしたらちょっとあったまるじゃない?!」
「バッカじゃないの」
「なんだ、おっさん、寒いのか」
涼しい顔をしたユーリが、振り向いて言った。
「寒いに決まってるでしょ!何、青年は寒くないの?」
「ああ、我慢できねぇほどでもないな」
「もー!代謝が良い若人は良いわね!おっさん冷え性だから手先凍っちゃって弓引くの大変なのよ!…サボっていい?」
「おいおい、堂々とサボり宣言かよ」
呆れた顔をしてレイヴンの隣まで下がって来たユーリだったが、いきなりレイヴンのポケットに手を突っ込んできた。
「!!!!な、なに?!!!」
「あ、嘘ついてんのかと思ったけど、ホント、おっさん体温低いのな」
手が触れて。
キュッと握られて。
ユーリの手は、ホカホカと温かかった。
(いや、絵面!!)
レイヴンは動揺した。
(いい年した男二人、同じポケットに手ぇ突っ込んでるって、おかしいっしょ!?)
焦ってポケットから両手を出し、万歳する。
勢いついでに、ユーリの手を弾き飛ばした。
「イテッ!おっさん、なにす…」
「おっさん!ジュディスちゃんに手、温っためてもらいたいな!!」
「あら、私の手はおじさまとあまり変わらないと思うわよ?」
ユーリと反対側にいたジュディスが、万歳をしているレイヴンの手にそっと触れてくれたが、体温を感じない程度には冷たかった。
その手を大事に両手で包むようにして下ろし、
「手が冷たい人は心が温かいって言うわよね」
と、目を合わせて言った。
自分と同様に冷えている手が心配だった。温めてあげられないことが悔しい。
「あら、ありがと」
「おい、おっさん、俺に喧嘩売ってんのか」
ユーリの目が半眼になる。
「あ!カロル君は子供体温で温かいんじゃない?!」
ユーリの追求から逃れるべく、レイヴンはカロルの方へ走った。
首に手を当てれば、ひゃっと叫び声があがる。
「やめてよレイヴン!冷たい!冷たいよ!」
「わははは!温か〜い」
結局、レイヴンの手を温める役目はラピードの背中に落ち着いたが、ユーリの行動による動揺で血流が良くなっていたため、手もすっかり温かくなっていた。
「わんこ、あったかいわね」
素直に背中に触れさせてくれるラピードに感謝してそう呟くと、ワフンと返事をくれた。
誤魔化すために触っているのを黙っていてやる、と、言っているみたいだった。
きっと気のせいだ。
たぶん。
12/9/2025, 12:07:23 PM