撫子

Open App

 人でごった返す駅の改札を通り抜け、新幹線切符売り場横の店の自動ドアをくぐった。
 入ってすぐの券売機の前で立ち止まり、制服のカーディガンのポケットに入っていた小銭を数枚投入する。並ぶボタンの上を視線でなぞった。

〖家族愛〗〖親愛〗〖友愛〗〖恋愛〗〖おまかせ〗

 「おまかせ」のボタンだけが古びてヒビ割れている。私もそれを押した。
 みんな、何が欲しいのか意外と分かっていないのね、となぜだか安堵した。

(愛があればなんでもできる?)

5/16/2023, 2:37:59 PM