「君って、ほんと赤色が好きだねぇ」
キッチンで作業している彼に向かってそうこぼす。彼は紅色の髪色に鮮やかな赤い目、それに赤いブーツ。まさに上から下まで赤色で囲まれてる奴だ。
「確かに好きだけど…舐め回すようにみるなよ」
そう顔を強張らせる彼に軽く謝罪を入れつつ、彼の赤色を見る。生え際が少し黒い、きっと染めているんだろう。染めるほど赤が好きとは…と感心していると今度は彼が私を見ていた。
「おや、どうしたんだい?」
「お前は白とか黒が好きなのか?」
彼曰く、私の着てるものがモノクロを基調としたものしか身に着けて居なかったり、白髪の三つ編みだから故の考えらしい。
「ふふ、御名答だ名探偵。それに加えて青と赤も好きだけどね」
そういいクルクル回ると彼はため息を吐いた。でもこれは彼の悪い癖であって、愛らしかったり恥ずかしくなったりするとため息を吐く。最初は呆れているのだろうと気にも留めてなかったが、ここ最近分析して気付いた。その時はイオと2人で笑った。
彼は純粋が故に不器用なんだ。驚くほど頑固で素直で…何故そういう人間ほど上手く生きれないのかと思うと悔しい。でも彼はこんな考えている心優しい私の事など気にも留めずに3時のおやつであろうドーナツを用意している。ドーナツは私とイオの大好物で、二人してドーナツの広告をジッと見ていた時に察したらしい。私もイオも聞かれれば教えたのにと思ったがそこが彼らしい不器用さなんだと思う。
「この美味しそうな気配ドーナツでしょ!?」
勘が働いたのかさっきまで天体観測をしていたイオがすっ飛んできた。スピードを出しすぎて彼に当たると鈍い声が出た後にイオに注意をしていた。人に注意されることを苦手にしているイオに罪悪感を持たせない注意の仕方をしているのでそこも彼なりの不器用で素直な部分だと思えると意外にも可愛らしくて笑えてくる。
「食べたい奴は手を洗ってこい。洗わないと食べさせない」
そう私達に声を掛けるので私とイオは手を洗いに行く。イオは楽しそうに自作のドーナツの歌を歌っていて、どうもおかしい歌詞で私も釣られて歌ってみては2人で笑う。せっけんもリズムに乗った私達の手で泡立てられ次第に大きくなる。水できれいに洗い流し彼が洗面台の手すりに掛けてくれたであろうタオルで手を拭き2人で戻りテーブルの椅子に座る。そうすると彼はお手拭きとお皿から少しこぼれるくらいに乗ったドーナツを置く。目を輝かせ食べ始める私達を見て彼はまたため息を吐き、優しい目で食べてる私達をみる。イオも空を見上げる時そんな目をする、だから私は青も赤も好きなのだ。それと、
「この色も好きだよ」
美味しいドーナツを頬張りながら言葉をこぼした。
創作 【好きな色】
6/21/2024, 2:19:07 PM