神木 優

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 僕は作家になれない。
 公園の木陰に寝転んだ僕は空を見上げ、そんなことを思う。
 小説もどきを書いては出版社に送る生活を続けて、もう三十歳手前。どこも色の良い返事は返ってこなかった。
 バイト先にでも就職しようか……
 そんなことを考えていると公園の外から小学生の声が聞こえる。四人グループ。じゃんけんに負けたであろう一人の児童が他の三人のランドセルを担ぎ運んでいる。次の交代ポイントは公園の入口な、そしたらまたじゃんけんしようぜ、と仲が良さそう。
 
 将来の夢、という課題を小学生だったころに書いたっけ?
「僕の将来の夢は作家になることです。作家になって──」
 作家になって、何をするんだったか思い出せない。
 でも、そんな昔から作家になろうとしてたんだな。

 僕は立ち上がって帰路についた。
 昔の自分に胸を張って作家になったぞ! って言うために。次の小説は自信作だ!
 

7/17/2024, 3:58:49 AM