300字小説
ロボットのホットワイン
……声のかすれ、発熱、咳、鼻水。風邪の症状を感知した博士をベッドに寝かし、キッチンに向かう。
今は亡き奥様のホットワインのレシピをメモリーから呼び出し、コンロに小鍋を掛ける。
赤ワインに砂糖を加え、シナモンスティックとグローブ、スターアニスを入れて温め、カップに入れてオレンジのスライスを浮かべる。
『後は愛情をたっぷり注いで出来上がりよ』
メモリーの中の奥様が私を見て微笑んだ。
「これをどうぞ」
身体を起こし、カップを渡す。一口啜って博士が
「彼女と同じ味だ」
嬉しそうに呟いた。
「ロボットの私では愛情は込められませんでしたが」
「いや、そこも彼女と同じ愛の味を感じるよ」
博士は更にカップを傾け、私を見て微笑んだ。
お題「愛情」
11/27/2023, 11:24:18 AM