今日はきっと、『届かないデー』だったのだ。
メールはもちろんのこと、ウーバーイーツも、お中元も届かない。請求書、贈り物、宅配便、ファンレター、あらゆる全てのものが届かない日だ。
嘆かわしいがこんな日は、救援物資も届かないだろう。
何せ、『届かないデー』だから。
金融市場じゃ注文データが届かないし、改革を訴える街角のデモの叫び声もクラクションにかき消されて届かない。
今日が七夕でなくてよかったよ。
願いなんて最も届かないだろうからね。
とにかく、何もかも届かないんだ。
謝罪の言葉も感謝の言葉も、祈りも愛も届かない。ほんの少しの善意さえ届かない日だ。
ましてや、僕がネットに投稿したショートショートなんて、誰の心にも届くはずがないんだ……。
「こんな日だから仕方がないな」と僕は独りごちた。
あのショートショートには、僕にしてはうまく書けた方だ。切なさと愛しさでコーティングした、ブラックな不条理なネタ。
今後は、届かないデーの投稿は控えよう、と僕は決心した。今日みたいな日に投稿したって、僕のショートショートはこの宇宙のどこかで迷子になるだけだ……。
きっと僕のショートショートはこのだだっ広い宇宙のどこかで、届けられなかったウーバーイーツや注文データや謝罪の言葉なんかと共に漂っているんだ。
僕は、届けられなかったものたちに思いを馳せた。僕自身までもが、その宇宙の中を漂っているみたいだった。
6/18/2025, 8:22:43 AM