放課後の教室にて。
「…ん、」
「ねえ、好きだよ」
どくん、と心臓が握り潰された音がした。
望んでいた言葉なのに、どうしてこうも違うの。言う相手が違うと、心音だって音は同じでも全然違うんだ。
忘れ物を取りに来ただけだった。
なのに、それなのに、なんで。
教室に踏み込めるわけもなく、教室の外で結果的に盗み聞き。
ちらりと見えたのは、揺れるカーテンの向こうで重なった影だった。
カーテンの向こうで、僕とはカーテンで区切られた近いのに遠い世界の向こう側で。
みたく、なかった。
知りたくもなかった。
僕は一生その向こう側の世界にはいけない。
やけに遠いカーテンの向こう側だ。
─カーテン─ #91
10/11/2024, 3:30:03 PM