春めく
芽吹いた花先のひとひらに込めた想いが
永遠に咲けと桜へ希っては散っていく脆さが
一陣の風に煽られてふと振り返り見る思い出が
何もかもが伸びて 伸びて 草木に生る青の季節
夏めく
サイダーの隙間から見惚れるあの人のきらめきが
長い歳月を海と生きたシーグラスから聞く助言が
アスファルトの熱を蹴った傍らで笑う陽炎が
何もかもが照って 照って 空に昇る白の季節
秋めく
どこかノスタルジィを感じる焼き芋屋を追う足音が
凩に吹かれてさんざめく落ち葉へ向けた憂いが
夕日に染まる横顔を眺めて同じ色に染まる頬が
何もかもが響いて 響いて 影を作る赤の季節
巡る季節はやがてひとつに集結する
冬めく
澄んだ夜を飾る星に乗せた涙の囁きが
蝋燭の灯りに幾許かの夢を映す眼差しが
マフラーで巻かれた二人分のぬくもりが
何もかもを結んで 結ばれて 軌跡を描く薄紫の季節
巡る季節はやがてひとつに終結する
7/7/2025, 11:47:04 PM