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 めがさめる。
 あたまはなんだかふわふわしていて、ねたままてんじょうをみあげていた。でもしばらくみていたらあきちゃったから、べっとからおきあがってみた。
 ここはどこだろう?まわりをみわたしたら、ちかくのてーぶるにしらないおにいさんがすわっていたので、こえをかけてみることにした。
「だれですか?」
 そうすると、おにいさんはこちらをみてとってもびっくりしていた。そのまましばらくかたまっているので、なんでだろうっておもっていたときに、こんどはおにいさんのほうがはなしかけてきた。
「…別に名前はないよ。あなたの知り合いだったってだけ覚えてくれれば大丈夫」
 こんなしりあいのひといたかなあ。むかし旅をしたときにでも知り合った人かな。いや、そもそも昔の私は、
「ッ!!」
 いたい。あたまがいたい。ないふでもささったようないたみにいっしゅんおそわれた。おもわずうずくまったわたしにおにいさんはたちあがってあわてたようすでこちらにちかづきながら、
「深く考えないで、あなたは記憶を無くしてしまっているから。昔の事を思い出そうとするときっとそうして頭痛が起きてしまうんだ」とはやくちでしゃべっていた。
 きおくをなくした、らしい。どういうことかはよくわかんない。でもそのあとになまえとかねんれいとかきかれたけどそれもよくわかんなかったから、きっとそういうことをいってるのかもしれない。このことをおにいさんにいったらなんだかかなしそうなかおをしていたけど。
 そんなことをしてるうちにちょっときづいたことがあった。めがさめたときからすこしへんだなあっておもってたから、きいてみることにした。
 「なんで、おにいさんもこのへやも、ぜんぶはいいろをしているの?」



 目覚めたとき、あなたは何もかもを失ってしまっていた。自分の過去の記憶も、名前も、そして僕のことも、全て。でも、それだけだったなら、もう一度、まだやり直すことはできると思ったのに。
 あなたは、世界の色すらも無くしてしまった。別に美しいものが特別大好きという人ではなかったけれど、それでも、あの瞳にもう2度と感情豊かな色彩の世界を映す事はなくなった。ああ、壊れてしまった。それを知って、僕は2度とやり直す事すらもできないことに気づいてしまった。もう元には戻れないのだ。戻れなかったのだ。
 気づけば涙が頬を伝っていた。ただただ悲しくて、辛くて、思わず膝をついて、嗚咽をあげて泣いた。そんな僕を不思議そうに、似合わない純粋無垢な表情を浮かべて、あなたはただ見つめていた。

4/18/2023, 1:23:28 PM