仕事が終わり家に帰ると上機嫌で迎えられた。
「おかえり〜」
「ただいま」
それに反射で答えて上機嫌で鼻歌なんて口ずさみながら先に歩く恋人の後ろについて行く。
いつもは玄関先まで迎えに来ないのにどうしたんだろうと考える。
リビングに着くとテーブルの上にはちらし寿司やらお吸い物やら白酒やらひなあられまで美味しそうに並べられてた。
「わぁ…まるでひな祭りみたいだね」
「そうそう。今日はひな祭りだしね」
そう言いながら席に案内される。
豪華に並ぶその料理に驚きながら素直に席に着いた。
「でもあれだね。ひな祭りって女の子のお祭りじゃない?」
「そうだねー」
「俺もお前も関係ないよね?それともイベント事好きだったっけ?」
まだ席に座らず傍らに立つ恋人を見上げながら疑問を投げかける。
「関係あるよ。お前にもおれにも」
にっこりと笑い掛けられるが訳が分からなくてその顔を見つめ返したままでいると
「ひな祭りってさー女の子のお祭りだよね。女の子の」
がっつり後ろから両肩を掴まれて顔を覗き込まれる。
「うん?」
なぜか圧を感じて曖昧に返答してしまう。
「女の子のね。そして」
意味ありげに間を置いてにっこり笑って付け足された。
「厄払い」
その笑みが怖くて無言でいると
「ねぇねぇ。この前SNSでメッセージやり取りしてたオンナだれ?たまたま見えちゃったんだけどさー」
耳元で低く囁かれた。
心なしか肩に掛かる手にも力が込められた気がする。
「あれは会社の業務連絡で大した意味は…」
「コノマエノノミカイタノシカッタデスネー」
答えてる途中で抑揚もない声で遮られて言葉を失う。
「って書いてあったよね?確か」
「それも会社の付き合いで…」
「そう…」
ポツリと呟いて目の前を通過したその指がきれいに並べられたひなあられを一粒摘んで、それから俺の口元に運ばれる。
「ちゃぁんと食べてよね、厄払い」
そのまま口に入れられる。
「浮気は許さないからね」
怒ったように呟いて、そしてそのまま口付けされた。
それを咄嗟に引き寄せて深く口付ける。
こんな可愛い恋人が居るのによそ見なんて誰がするかよ。
でもせっかく用意してくれた事だし美味しくいただくことにしよう。料理も恋人も。
本当に、“今日は楽しいひな祭り”になりそうだ。
素敵なお祭りありがとう。
(ひなまつり)
3/4/2026, 9:16:58 AM