『バカみたい』
大学の頃から付き合ってた彼と今年の春同棲をし始めた。
私は近くの印刷会社の事務、彼はらしくもない営業職。
案の定優しすぎる彼は無理を通すことが出来ずにいつも成績はしたっひ。
練習して、残業して。
せっかく一緒に暮らし始めたのに私と彼はすれ違う生活になってしまっていて、たまに休みがくれば疲れた表情を見せてデートどころじゃない。
そういえば、付き合った頃の様な彼の笑顔を最近見てないなと思う。
いつも眉間にシワを寄せて難しい表情ばかりで、このままでは彼の一番好きな笑顔と優しさが消えてしまいそうで怖い。
少しでも彼を励ましたかった私は、何時になったってどんなに遅くなったって今日は寝ずに彼の事を待っていようと彼の大好物のオムライスを作る事にした。
オムライス、それは彼との思い出の料理。
学生時代あまり料理が得意ではない私が、彼の大好きなものをと初めて作った料理だから。
でも、作った事のないオムライスは真っ黒に焦げてお世辞でも美味しそうとは言えないものに仕上がってしまった。
なのに…。
『うん!美味い。本当に美味いよ。』
優しい彼は嬉しいそうに焦げたオムライスを平らげてそう笑ってくれた。
そんな優しい彼を本当に喜ばせたくて何度も何度も練習したオムライスは、今では誰に出しても平気なくらい上手くなったと思う。
鼻歌交じりに出来上がったオムライスをお皿に乗せ、いつでも温め直せるようにラップを掛けた時、机の上のスマホからメッセージアプリの通知音が聞こえた。
彼からの連絡。今日は早く帰ってくるのかとワクワクしながらメッセージアプリを開けば。
【飲み会。遅くなるから何時も通りにしてて。】
そんな彼からのメッセージ。
絵文字もなんにも無い文面から目を離し、私は机の上に乗った2人分のオムライスを只々眺めた。
3/22/2026, 1:37:26 PM