烏羽美空朗

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冷たい夜風が容赦なく頬を刺してくる中、ベランダから遠くの空き地で揺れ動く雑草達を見下ろしている。さらさらさら、枯れ葉が擦り合う音を想像しながら、水筒に淹れた緑茶を一口飲み込んだ。

あの空き地は、俺がこの部屋に引っ越してくる前からあの状態であり、数年に一度除草剤を撒かれ、更地に戻される以外は殆ど放置されている。
丁度この時期になると、背高草の中に白くてモコモコとした物が混じり、それに反射して狭くも見事な月明かりの波が生み出されるのだ。

俺に植物の知識はないし、しっかりと調べた訳でもないが、多分、稲穂のようなあれはススキだと思う。あそこを通りかかる度に息のあったウェーブにつられて見上げてしまうのだが、俺よりも背の高い彼らは二メートル以上はあるだろう。

しかし、こうして上から見てみると、緑色の割合が段々と増えている気がしてくる。除草剤のせいだろうか?

彼らの揺らめきをこうしてぼんやりと眺めていることも、この季節に待っている楽しみの一つなのになぁ。

ススキ

11/10/2022, 12:06:56 PM