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さよなら終点やっとこ始発

窓のそとには煙と見とれてしまうほど美しい星空、そして永遠に続くレール。
この列車がどの星空を走っているのか、どこに辿り着くのか、私には分からない。
気がついた時すでに私はこの列車のこの座席に座っていてそれ以前の記憶がおぼろげだった。いつものように大学へむかって講義をうけて、友達と意味もないオチもない話をくっちゃべり、電車に乗って家に帰り──そんな日々の延長線上、繰り返す日々にいたはずだった。少なくともこんなファンタジーのような列車に乗ることは絶対になかったはず。
最後の記憶は誰かが私を呼ぶ声とサイレン、赤い何かの花弁。その記憶ですら脆く、触れれば壊れてしまいそう。考えてもどうしてそんな記憶なのか思い出すことも出来ない。

列車から降りて家に帰ろうにもこの列車が止まることは1度もなかった。さらには人っ子一人乗っていない。操縦席ちは向かったものの、そこは空っぽで霞のような煙が漂うだけだった。
列車内は明るく、穏やかなBGMが流れている。こんな状況でなければ乗り続けていたいと思うほどの心地良さだが、“帰らなければいけない”という理由のしれない焦燥感が胸に燻っていた。





8/10/2024, 10:39:36 AM