妄想

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『そっと』

「おじいさんまたね。本の続き楽しみしてる!」

少年は元気に手をブンブン振りながら自分の家へと帰って行った。

少年は私の最初できっと最後の友人だった。

町で唯一私を気味悪がらないのはこの少年だけだ。
買い物から帰る時に、躓いて動けなくなっていた私を
屋敷まで運んでくれた。
それをきっかけに、毎週木曜
いつも私の書いた本を読みに来てくれている。

ひとりぼっちだった私にはそれがとても嬉しかった。

今日は水曜日。
明日だ。明日来てくれる。
次の話でこの物語は終わる。

物語の結末はなかなかいいものが書けた気がする。
満足そうにふっと笑い、本をぱたんと閉じた。

「1人で寂しく死ぬと思っていたが…少年には感謝だな。この物語も最後まで書くことができた。」

ゆらゆらと火が揺れるロウソクに息を吹きかける。

彼はそっと目を閉じた。

月の光が彼の顔をひっそりと照らす。
とても満足そうな、幸せそうな顔だった。



静かな長い眠りだった。

1/14/2025, 1:11:36 PM