波音に耳を澄ませて
中学生の頃、学校へ行くふりをして、海へ出かけていったことがあった。片道2時間半も歩いて、たどり着いた海で1人、波音を聞きながら、何をするでもなく、ぼーっとしていた。次第に太陽がゆっくりと頭上へ移動する頃、空腹感に耐えられなくなり、仕方なく家に帰ったのだが、この行動がちょっとした問題になっていた。
海から2時間半かけて歩いてきた僕は、家の近くで、先生たちの姿を目撃したのだが、その時間帯に授業を受け持っていない先生たちが、総出で僕を探していたらしい。保健の先生に声をかけられ、僕だと確認すると、
「いました!見つかりました!」
と大きな声で他の先生たちに報告した。僕は、恥ずかしいやら情けないやら変な感情が溢れ出て、涙を流していた。
その日の午後、担任の先生がウチに来て、なぜいなくなったのか、どこへ行っていたのか訊いてきたけど、僕はただ泣くだけで何一つ答えることが出来なかった。
何かあると、必ず海へ出かけていた僕にとって、そこは大事な場所の一つだ。今はもうあまり行くこともなくなったが、大切な思い出の場所になっている。
7/5/2025, 10:50:39 AM