白糸馨月

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お題『生きる意味』

「ねぇねぇ、生きる意味って何だろ?」

 教室でお弁当を食べながら友達が口火をきった。それにしても、その話題自体が唐突だ。

「さぁ? わかんない」
「だよね」
「なんで急にそんなことを言い出したの?」
「これ、見てよ」

 友達がスマホを私に向けてくる。見せられたのは、同じクラスのちょっと目立つ女子のインスタアカウントだ。
 そこには顎に手の甲を向けるタイプのピースサインをあてがってる自分のキメ顔の上に手書きっぽい白文字でなんだかポエムが書いてある。最後に『これが私の生きる意味』でしめくくられてる。正直、ダサい……とはいえないので。

「もしかして、これに対して大喜利しろってか?」
「あ、それウケるね。じゃなくて」

 友達が急にあさっての方を向き始めた。

「私の生きる意味ってなんだろうねって、ふと考えちゃったんだよね」
「んん? この子の場合は承認欲求だよ?」
「分かってる。前もクラスで『いいねが足りない』ってきりきりしてたりしね。でも、私のはそれとは違うんだよ」

 しばらく沈黙が流れる。私はふと、思いついたことを言う。

「今こうやって喋ってることが私達の生きる意味じゃない?」

 友達の頭上に電球が浮かぶのが見えた。

「え、なに? これプロポーズってこと?」
「ちがうわ」
「ちがくないって、照れてんぞこのこのー」
「照れてないわー、ってかやめろ、抱きつくな」

 それから私達はじゃれあいながらひとしきり笑った。今の私達には、こういうくだらないやりとりをすることが生きる意味なのしれないと思った。

4/28/2024, 1:30:42 AM