【愛を注いで】
愛のコップってご存知ですか?
「あ?なんだこのCM」
たまたま職員室のテレビで
目にした内容だった。
「聞いてんのか?」
俺は先生の声で
意識を現実へと戻された。
「お前言ったよな?
今回のテストは特に頑張れって」
「言われたような~?言われてないような~?」
「はぁぁ…数学ならまだ
皆が苦手だからって思えるけどな
なんで、苦手科目が現代文なんだよ」
「数学は公式覚えればいけるっしょ?
けど、現代文とかって公式ねぇーじゃん!!」
「敬語を使え。そこからだぞ?」
「………」
「どうした?黙って」
「1+1は2」
「は?お前…壊れたか?」
「センコー?数学は四捨五入あって
【切り捨てる】ことはできるけど
なんでさ、恋愛は切り捨てられねぇーの?」
「お前にしては難しい質問を問いてくるな」
「別にいいじゃん?」
「コップに満杯の愛が入ってるとしろ」
「愛?水じゃなくて?」
「いいから黙って聞け」
「満杯の愛が縁ギリギリなのに
そこから新しい愛を入れたらどうなる?」
「縁ギリギリだから溢れるに
決まってるっしょ?」
「そうだな、けど
コップにヒビが入ったら?」
「もれる!!」
先生は首をゆっくり左右にふった。
「もれない」
「は?ヒビだろ?絶対そこから
もれだすに決まってる!」
「俺の話聞いてたか?
誰も水の話をしてないんだよ」
「ん?センコーこそ頭壊れた?」
「よく耳にしないか?
【歪んだ愛はドロドロ】って」
「ドロドロ?」
「ドロドロだからヒビが入っても
もれだすことはない。」
「へぇー!なるほど!」
「どんなにコップがヒビ入ろうとしても
中の愛は一滴もこぼれない
けれど愛を受け取りすぎると溢れる。」
「あー、確かに溢れちゃうな」
「けどなよく未練ってあるだろ?」
「それさ!!マジで現在進行形!!!」
「じゃあ、そんなお前に朗報だ」
「溢れ出た愛は地面へと落ちるよな?」
「ひゅーと落ちるな」
「落ちたとしてもドロドロな
愛は現状を保ったままだ」
「うん?それが?」
「結局、コップの周りにドロドロくっついてんのは
歪んだ愛が滴ってるってこと」
「やべぇ…分かんなくなってきた」
「簡単に言うとな俺が言ってた
【コップ】を【心】に変換してみろ」
「コップを心に変換?」
「いいか?
歪んだ愛がお前の心にまだ
ドロドロにくっついてるってことは
消化しきれてないってことだ」
「あ!だからか!!」
「そうだ、だから未練ってことだ」
「俺の心の周りを溢れ出た愛が
まだくっついてるってことで
未練タラタラってことになってるってこと!?」
「お前…本当に国語苦手なんだな」
「へ?」
「俺が簡潔に教えてやる」
「さすがセンコー!」
「俺が言いたいのは
愛の未練が試練に変わったってこと」
「ん?え?もっとよく分かんねぇ」
「新しい1歩を踏み出せってことだ」
「それと愛をどう関連づけたんだよ?」
「いいから行ってこい」
「何処に?」
「予鈴なったぞ」
「あ!やっべぇぇ!
センコー!よく分かんなかったけど
サンキューな!またな!!」
静かになった職員室で俺は言葉を発した。
【俺はお前に生徒として
愛を(すくった)救ったんだよ…このクソガキが!】
おわり
12/13/2024, 1:31:18 PM