わをん

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『変わらないものはない』

埃を被った学習机の引き出しを開けると大事に大事にしまい込んでいた宝物の数々が出てきた。つやを失って変色したキーホルダーに、白けてしまったプラスチックの人形。いい香りのするティッシュはもうただのポケットティッシュだ。部屋を見渡せば住み着いた小動物のふんでどこもかしこも汚れてしまっている。
「持っていく物、何かあった?」
「いや、なんもないね」
こども部屋を共用で使っていた兄はだよねぇと相槌を打って隣に並んだ学習机の引き出しを閉じた。
生まれ育った一軒家はもうじき解体されてその跡地には兄夫婦の新しい家が建つ。古びた思い出を捨て置くことに後ろめたさはあるけれど、いつかは手放すものなのだと誰に言うでもない言い訳をする。
玄関から外に出ると父が感慨深げな顔つきで家を見上げていた。つられて見上げた家は小さな頃と比べて少しだけ縮んで見えた。

12/27/2023, 3:43:22 AM