ことり、

Open App

失恋


「タケルってさ、俳句するんでしょ?」

ミコは、クッションを抱え込んでソファに
座り、猫背でテレビ画面を見つめたまま
言った。乾きかけのフェイスパックが
ひらひらしている。

タケルは、歯を磨きながら、何だよ
ヤブカラボウニ、と思ったが、

「うん、それらしいものをxで呟いたり、
するね。でも今俺ら、同棲するかしないかについて話してなかったっけ?」と、若干泡でモニュモニュしながら言った。

ミコは前を向いたまま、
「うん、それでさ、ちょっと調べたの、
俳句の先祖の一つに、連歌っていうのが
あってさ」

タケルは口を濯ぎながら、
「家とかについて調べたんじゃないんかい」と心の中で突っ込む。

「で、連歌って、連歌には "式目" って
言われるルールがあってさ、
例えば、100 句の中で 1 回しか使っちゃだめな言葉が決まってたり、同じジャンルの
言葉は続けて使っちゃだめ、春や秋の句は
5 回連続したら次からはストップせんと
いかん、恋の句がいったんストップしたら
再開するまで 5 回待つ、とかさ、
要は地雷みたいな初見殺しみたいなルールがあるわけ。
でタケルってさ…」

ミコはフェイスパックを勢いよく剥がして言った。
「今まで私の地雷踏み抜いてきたわけ。」

コップを持ったまま、タケルの首筋に冷たいものが伝う。溜め込んで爆発する系だったのか、ミコは。やばいぞこれは。

「た、たとえばどんな地雷…?」
「私が春の句を5回詠んでるのにストップしてくれない」

「具体的に…」

「モラハラだよね、私あなたの妹ちゃんに
会いたくないって言ってるのに、初め小出しに言って、最後は、もう会いたくない!
って言っても、悪気ないんだ、あいつ日本語下手だから、で済まされる。

会うたびにあなたのいないところで、
あ〜そのカバン駅前でバーゲンしてたやつ〜、とか、ミコさんの学歴でお兄ちゃん
OKしたんだぁ〜、とか言ってくるのに、
あなたはいつもいつも妹の…!」

「だから、別れましょ」

タケルは、わあわあと食い下がったが、
ミコはもうタケルのちょっとした荷物を
まとめていた。
じゃ、とタケルのパジャマの上に春コートを着せて、段ボール持たせて、
文字通り放り出された。
「妹ちゃんによろしくねえ〜」
と、ミコは笑顔だった。

ああ…タケルは夜空を仰いだ。
失恋の句、浮かんでこねえや。




以前、書く習慣を本にしたいとつぶやきましたが、それらしいものを作れそうです。

ご存知の方も多いと思いますが、

ハートの数のページ?で、「自分の作品」をタップ→右上のマルに3つのポチをタップ→上から2個目のURLをコピーをタップ→スマホのメール機能で、ワードなどで編集できる
パソコンなどへメールにURLを貼り付けて
送る→パソコンなどに書く習慣のアプリが
なくても、URLをクリックすれば開く→
ワードなどに貼り付け、体裁を整えて
印刷する


私は2段組にしても50ページくらいになりました。両面印刷しても25ページ。
どうしよう。

6/3/2024, 6:32:50 PM