小絲さなこ

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「歌は記憶の扉を開く」



ある有名シンガーソングライターの歌がラジオから流れると、君のことを思い出す。

自分たちの親よりも年上のシンガーソングライターの歌がどんなに素晴らしいかを友人たちに語っていた君。

「シブい」だの「おっさんじゃん」だの言われていたけど、君はそんなことを気にしていないように見えた。


他の子たちとは、ちょっとズレていた君。
卒業式のあと「長生きして下さいね」なんて言うものだから、思わず笑ってしまった。


君の好きな人が誰なのかは、知っていたんだ。
だから、想いを告げることはしなかった。
フラれるのは辛いけどフる方も辛いから、君に辛い思いをさせたくなかった。




君が好きだったシンガーソングライターの歌がラジオから流れている。

普段は忘れている、君のこと。

今どこで何をしているのだろう。
会いたいわけではないけど、そんなことを思ってしまう。


「最近、この曲流行ってるんだけど、昔のなんだね」

最後に会った頃の君と同じ年の娘が、君が一番好きだと言っていた歌を口ずさんでいる。



────君と最後に会った日

6/26/2024, 2:54:30 PM