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#秋恋


私は当時、陸上に夢中だった。
性別の差なんて考えていなかった。
とにかく、誰かに勝つことがとても嬉しくて。
記録もどんどん伸びていくし、練習も苦じゃなかった。

しかし、時を重ねていくにつれ、記録が伸びなくなっていった。

女の子が誰しも通る道。

“大人”になった証拠。

好敵手の彼にも、どんどん差を詰められていく。
私は不安と焦りでいっぱいになった。

体も重いし、足が思うようについてきてくれない。

私は彼のことが好きだった。
でも同時に、羨ましさもあった。

私も、男に生まれていたらよかったのに。
彼と、対等に、実力を正面からぶつけられたのに。

そんな思いが頭の中をぐるぐると回る。

……でも、そもそもなんで私は陸上をやっているんだ?
大会に出たいわけでもない。一位になりたいわけでもない。どうして私は、そんなに陸上にこだわるんだ?

ふとそう思った。
今までのことが、すべて崩れ落ちた音がした。

──私は、その場から逃げた。
私の初恋は、赤黄に染まった木の葉とともに散っていった。




秋恋

・秋という季節に始まる恋、または秋に抱く恋の感情。
・秋の情景や雰囲気と結びついた恋。
・秋の切なさやセンチメンタリズムを伴う恋。

10/10/2025, 6:57:12 AM