絆
銃声が響いた。日常が終わった。
普段なら耳を澄まさずとも聞こえるはずの喧騒もなく、全てを上から塗り潰したそれは、空砲だった。
緊張で静まり返った大地に銃声が波紋状に広がり、周りで行く末を見守っていた観客は、皆にそれが伝播したかのように思い思いに叫んでいた。
銃の持ち主からできるだけ遠ざかろうと走る。我先にと駆け抜ける何者かを横目に、悲鳴を横切って、砂を蹴った。地面は硬く、柔らかかった。風は微妙に向かい風だった。
手に持った赤い筒を、仲間に手渡すまで止まれない。
汗が右目に入った。
風で砂が舞っている。
実況席の前を駆け抜けて、並んだスピーカーを追い抜いて。まだ銃声が反響している熱暴走を握りつぶして。
体を打ちつける何かを掻き分けた先で、友人が手を後ろに出して待っていた。
ああ、今のところは三位か。
自分の息遣いが聞こえた。
無責任に、これなら大丈夫だろうと思った。
テイクオーバーゾーンを抜けた後、観客になって、叫ぶ。
3/6/2026, 12:02:58 PM