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空を見上げて心に浮かんだこと
(番外編⑩)の続き

私だけ(番外編)⑪

●中身が君じゃないだけで....

ふわり ふわりと体が軽い
体重と言う物が無くなったみたいに
軽い 私どうしたんだっけ....

頭を回転させて思考を回す。

嗚呼.... 確か キモいストーカー男に
つきまとわれたんだっけ....

ちょっと優しくしたら勝手に勘違いして
本当に迷惑.... それからどうしたんだっけ

と 自分の行動を思い返していると

ガラスのショーウィンドウを横切り
ふと見ると.... 何これ.... これ私....
ガラスのショーウィンドウに映った
自分の姿は、人じゃなかった。

例えるなら、人魂と言う言葉が一番近い
   『何よこれ!』






【○○区で二十代女性がナイフで刺され
重体 刺したのは三十代男性】

そんなニュースがビルの街頭の広告塔の
画面に流れていた頃

ハイネ ミーナ ナイトは、穢れた魂を
浄化していた。

魂が次々と透明化され、真っさらな状態に
戻って行く。

魂が消えて、仕事が一段落して、魂の浄化した数をバインダー局に報告しに行く三人

その三人の後を付いて行く影があった。



『何かしら?この建物?』私は、興味
本意でその建物に入って行く


目に付いた三人に付いて行ったら
馴染みの無い建物に入った
『何のお店かしら? 此処?』
今の人魂の姿と同じ物を相手に何やら
戦っていた三人の後に付いて行ったのは
良いけど私この姿から元に戻れるの
かしら?

しかしこの姿 手足も無いし
口も無いから、喋れてるのかしら?
こそこそと隠れながら様子を窺って
いると....

「皆....お帰り....」小学生みたいに小柄な
少女が三人に近付く

「「ただいまシズク」」金髪の少年と
赤髪の少女が小柄な少女に笑顔を向けて
答える。

『何あれ....』なんだかほんわかした
空気が流れる。
小柄な少女が皆に飲み物を配っていた。
「ありがとうシズク君」
「ありがとうシズクちゃん」
椅子に腰掛けていた妙齢の男性とその隣に
立っていた妙齢の女性も飲み物を受け取り
お礼を言う。

最後に小柄な少女は、目付きの鋭い少年に
飲み物を渡す。

その目付きの鋭い少年は、他の四人と
違い少女にお礼は、言わず黙って受け取る。しかし少女が後ろを向いて
目付きの鋭い少年に背を向けた
瞬間 今までどの人が浮かべた笑顔より
一番 目付きの鋭い少年の笑顔が少女に
向かって一番優しく甘い笑顔だった。

瞬間 私は、初めて見掛けた 初対面の少女に向かって嫉妬した この部屋の
中心人物は、あの小柄な少女だと私は
理解した。

何故か私はあの少女にとてつも無い羨望を
抱いていた。
嫉妬していた。その嫉妬が止まらない
気が付いたら私は、....


皆に飲み物を配っていたシズクの動きが
突然止まった。
「シズク?....」ハイネに背を向けたまま
動きを止め そして....いきなりシズクは
体ごと倒れた。
「シズクーーっ」ハイネが急いで駆け寄り
シズクの体を受け止める。
他の皆もシズクに駆け寄る。

「シズクどうしたの?」ミーナが心配そうにシズクを覗き込む

そうしてしばらくしてシズクの目が覚めた
「シズク良かった!」ミーナが安堵した
声を上げると....

「何この体 色気 全然無いわね!
胸なんてペッタンコじゃない」
シズクの声でシズクらしからぬ口調で
言葉が発せられた。

「シ....シズク....」ミーナが目を見開いて
シズクを見る。

「あら 何そのまぬけな顔 ウケるんだけど....」シズクの体でシズクが決して浮かべない人を見下した表情をする者

「テメェ誰だ!」ハイネが警戒する様に
鎌を握り締める。

シズクの体に乗り移った者がハイネに手を
伸ばしハイネに抱きつく

「ねぇ貴方 この子の事好きでしょう!」
ハイネに向かって艶然とした笑みを浮かべる シズクに乗り移った者
ハイネは、不快に顔を歪め 体が密着しない様に体を反らせる。

「ねぇこの子の代わりに私を愛してよ
満足したらこの子から出て行ってあげる
でも言う事聞いてくれなきゃ....」
そう言ってハイネの鎌の刃に手を伸ばし
触れる。
「なっ....」ハイネが気付いて一歩下がった
時には、シズクの指が小さく切れ血の筋が
付いていた。

「この子怪我しちゃうかもね....」
「っ....」シズクを人質に取られ
ハイネ達は言う事を聞くしかなくなった。


さっきから俺の膝の上でシズクが髪を指先に巻いたり 爪を磨いたりしている。
いつもだったらこんなにシズクに密着されたら胸の鼓動が煩くなって心臓が高鳴るのに顔に熱も上がらず俺は、冷静にシズクを見ていた。

正確には、シズクの体に入った者を....
「ねぇ喉乾いた誰か飲み物持って来て~」
その言葉にミーナが口をへの字にして
お盆にジュースを載せて持って来た。
そうして渋々机にグラスを置く

いつもニコニコしているナイトですら
眉を吊り上げミーナをこき使う
今のシズクに射殺しそうな視線を向ける。

「ねぇダーリン キスしよう!」と俺の
首に腕を絡め甘い猫撫で声で強請るそいつに俺は、背筋に寒気が走った。

シズクの声でそんな風に媚びた様な口調で
言われると 腹立たしいし気持ち悪かった。

俺は、我慢の限界だった。
俺は、そいつを乱暴に押し強引にそいつを
退かせる。

「きゃっ ちょっと何するのよ!」
俺は、不快感を露わにしてそいつを睨み上げる。

するとそいつは、びくっと肩を跳ねさせ
尻餅を付いて 後ずさる。



「なっ....何よ!」私は、唯あの小柄な少女が向けられていた優しく甘い笑顔が欲しかっただけなのに....

あんな風に私だけを愛してくれる
誰かが欲しかっただけなのに....

「そろそろシズク君を離してくれないかい
○○○○さん」

妙齢の男性が私を呼ぶ 私の名前は
そんな名前だったけ....
いつの間にか記憶が曖昧だ
「君の事はニュースでやっていたからね
なんとなく当たりを付けたんだと言っても
君の記憶はもうぼんやりとしているだろうけどね....」

『記憶....そうだ私はあいつに刺されたんだ
  だから私』

私は愛される事ばかり欲しがって
人を本当の意味で愛していなかった
自分の容姿に甘えていた。
だから私は、あの子が羨ましかったのね....

「君は此処に居ない方が良い....」

『はい....』私は、今までの態度が自分でも
信じられ無い位 素直に妙齢の男性の言葉を受け入れた。
こうして私の魂は安らかに消えた。




あれ....私いつの間に眠ちゃったんだろう
シズクは、丸い目をぱちくりと瞬いた。
目を向けると皆の嬉しそうな顔があった。
(皆どうしたんだろう....何か良い事があったのかなあ....)
シズクは皆の嬉しそうな笑顔が見られて
自分も凄く嬉しくなった。

7/19/2024, 8:49:55 AM