ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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星空

「マスター、ここ清酒あるのー?」
と、店に入るなり叫んでみた。

「おまえな、ここカクテルバーだぞ」
「マスター自分は清酒飲んでた!知ってる!」
「あるにはある。小夜衣と開運だ。てかおまえいつもチューハイ飲んでたろ。急に日本酒なんてどうした」
「小夜衣ちょうだい」

マスターにうまく説明できる気がしないから徳利で出てきた小夜衣をおちょこについで飲みながら窓の向こうを見る。七夕は雨が降りやすいけど今日は晴れててわし座が見える。

「約束したんだ。今日晴れたら酒を飲もうってね。でもそいつ濁った酒しか知らないんだって。だから透き通った日本の酒を飲ませたくてー」

おれ、あんまり酒強くないけど清酒はうまいと思う。小夜衣は甘くて優しくて大好きだ。

「一応聞いとくがそいつは人間か?」
とマスターが聞くけどそんなこと知らんと言いかけたら店のドアがちりんと鳴って、

「今日は挨拶にきただけ。明日また来るね」
爽やかに閉めたドアのまわりに舞い散る光の金粉。
まるで室内に唐突に現れた星空。

「おい。もう一度きくけどあれは人間か?」
「うーん。たぶん…彦星だと思う…」

7/5/2024, 12:31:12 PM