月が凪ぐ夜

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君は僕に「寂しさに慣れないで」と言う。
寂しさに慣れる人間などいない、とも言った。

けれどね…僕のこの胸の穴はもうずっとずっと遠い昔に空いてしまったもので、いくら君にきつく抱きしめてもらっても決して埋まることはないんだ。

この穴は―――あの人にしか埋められない。
そしてあの人は…求めたところでここには来ない。

君を愛せたのならばどんなによかっただろう。寂しさなんて知らずに、幸せにいられたかもしれない。それでも僕にあの人を愛さないという選択肢はなかった。

僕を形づくったのはあの人だから。
僕のすべてはあの人にもらったものだから。

君を好きだと言いながら、あの人のいない寂しさを君で埋めている。…酷い人間だね、僕は。


【寂しさ】

12/19/2023, 5:15:07 PM