確かなことは言えなかった。
曖昧な約束も出来なかった。
人の為す世が好きだと言いながら、人から隠れて生きなければならない。
魔物の僕は、もうこの地を離れなければならなかったから。
けれども察しの良い君は、そんな僕の心も見透かしていたんだろうね。
旅立ちの日。
何も告げていなかったはずなのに。
颯爽と現れた君は、僕を見付けて大きく手を振った。
「またね! また、会いましょう!」
優しく愛しい。君の姿が、離れがたい。
でも、行かなきゃ。
涙を堪えて、手を振り返した。
「うん! またね!」
もう二度と、会えないだろうけれど。
さようなら。僕の大切な友人よ。
叶うのならば、いつの日か。
再び巡り会える日があらんことを。
小さな願いを胸に、これからを生きよう。
(2024/11/13 title:065 また会いましょう)
11/13/2024, 11:54:55 PM