yunyun

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 ふっと私の目の中に小さな黒猫が写りこんだ。その黒猫は子猫のようだ。この子猫のお母さんはどこにいるのだろうか、元の飼い主に捨てられたのだろうか。気になることはたくさんあったが、まずは子猫の飼い主を探すことにした。首輪がないから探すのは大変だろうけど、子猫も飼い主の所に帰りたいだろう。そう思うとますます子猫を放っておけなかった。
 子猫を抱き上げようと手を伸ばすと、その手をさっと避けて塀の上に登った。子猫でもあんなに高い所に登れるんだと感心しつつ、危ないよ、と声をかけた。
 すると、子猫は私の前を歩いて行き、少し歩いた所で止まった。もしかして、ついて来い、とでも言っているのだろうか。違うとしても、私はついていくことにした。

 しばらく歩いていると、知っている場所についた。暁月神社だ。確か、お祓いをしていた神社だったと思う。私は一度、お参りをしただけだったが、男子達はよくここでかくれんぼをしていた。隠れる場所が多いからかくれんぼには最適らしい。だから、遊んでいる最中に誘拐しようとする人もいたけど、未遂で終わっていた気がする。その効果が神社のかは知らないけど。
「どうしましたか。」
突然後ろから声をかけられた。振り向くと、この神社の巫女さんらしき人が立っていた。
「えっと……。黒い子猫を追いかけて来たんですけど……あれ?」
いつの間にか子猫はいなくなっていた。そして、巫女さんがこう言った。
「もしかしたら、あなたを助けたかったのでしょうね。」
わけが分からず混乱していると、また巫女さんがいった。
「ここに祀られている神は猫なんです。なので、世で黒猫は不吉だと言われているのに不気味がらずに自分のことを心配してくれたあなたのことを助けたかったのだと思います。」
私の方を見て巫女さんににこりと笑った。純粋で表裏のない笑顔だった。
「さっきからどういうことですか。私を助けたいって。」
「それはね、あなたが呪われているからでしょう。」
「…………ぇ。」
声にならない声が出た。私が呪われている?そんな話すぐに信じられなかったけど、思い当たることはあった。
 最近、体調が優れなかったり、体が重い。信じたくないけど、彼氏が浮気して、その上ひどい振られ方をしたのもそのせいなんだろうか。
「でも、安心してください。今すぐ呪いを解きますから。あっ、でも無料ですからお金のことは心配しないでくださいね。」
 そう言って私の呪いを解いてくれた。

 帰るとき、最後に気になったことを聞いてみた。
「どうして子猫が私のことを助けたかったって分かったのでしょうか?」
「あぁ、それはね」
巫女さんが私の後ろの方を見て、
「その猫がこの神社の神様で、私に教えてくれたからよ。」
と、教えてくれた。後ろを振り返ったが、誰もいなかった。

 あれから数年後、私は婚約者ができた。私のことを大切にしてくれる優しくてかっこいい同い年の人が。私のことを振った元カレは、浮気した分の制裁が下され、私とよりを戻そうとしたけど、振られた時と同じようにして断った。

 今、幸せなのは、あの黒い子猫のおかげだ。そのお礼の気持ちをこめて、暁月神社に週に一回お参りしている。黒猫だとか、白猫だろうが、みんな同じ生き物だ。黒猫だから不幸になるとは限らない。私はそれを胸を張って言える。

 なぜなら、私が黒猫に幸せにしてもらったからだ。

11/15/2023, 4:39:06 PM